見えない圧力とアイデンティティー
Guest User
· 投稿者: miyukiphd
· 投稿日: 10月 10日, 2018
· 臨床心理学
ステレオタイプとは私たちの固定観念の事を言います。私たちの認知が近道を使い、その対象物、出来事、人物等を一つの枠に当てはめる事によって、より早く状況を把握し、自分の行動を選択することが出来ます。こういった半面、ステレオタイプは偏見や差別の原因になる事もあります。年齢に関わらず、私たちは日々見えない(ジェンダー、人種、身体的特徴等)ステレオタイプの圧力を受けています。そのステレオタイプは必ずしも肯定的なものとは限らず、それが如何に私たちのアイデンティティーに影響するかという事についてお話ししたいと思います。
私は日本で暮らしている時は、人前で話すことが苦手だと思ったことは一度もありませんでした。むしろ、幼い頃からピアノの演奏や演劇、スポーツなどを通じ、人前に立つことが好きな方だったと思います。日本に居た時は幼い頃から「活発、お転婆、社交的」等とみられ、思春期になって意識的に「控え目」に行動をし始めてからも「内気」等というラベルは一度も貼られた事はありませんでした。ところが、海外で暮らすようになって自分の得意不得意が変わり、他人が自分を見る目も変わりました。例えば、言葉と文化の違いから、当然他人との共通の話題も少なくなり、話す事自体が少なくなります。そして、海外での「元気、外向的」という定義は日本の定義とは違います。そして、アジア人、特に日本人女性のステレオタイプもあります。その為、海外で私は「内気」「内向的」とみられるようになりました。そして、周りからそういう目で見られると、自分もそうなのかなぁと思い始めたり、そういう行動を取ったりするのです。これらの経験を通じて、アイデンティティーについて改めて考えざるを得ない日々になりました。同じような経験は誰にもあると思いますし、公的な立場にあればあるほど、ステレオタイプによる圧力を経験する事は容易に想像出来ます。そして、これは大人に限ったことではありません。
私には二人の息子がいますが、子供達が幼い頃、息子たちには性別に関わりなく好きなおもちゃを選ばせました。洋服も靴も、好きな色を選ばせました。二人とも一番のお気に入りのおもちゃはぬいぐるみやおままごとセット、ボール、パズルでした。トラックや車には目もくれず、好きな色も二人ともピンクでした。比較的ジェンダーニュートラル、もしくは一般的に言うと女の子用のおもちゃが多かったと思います。二人とも幼稚園年長まで女の子が親友でした。ところが、二人とも一年生(満5歳)になると急に、ぬいぐるみも、ピンクも、女の子のお友達も好きじゃない、と言い始めたのです。私が何故か、と問うと、「男の子だから」というのだから驚きです。勿論、皆が皆同じ時期に社会的な圧力を感じる訳ではないでしょうが、二人とも、ぴったり、小学一年生から自分の性別と、性別による社会的に期待された行動を取るようになったのです。こちらの小学校は制服があり、男女差も見た目ではっきりしています。それでも、下の息子は小学2年生位まではどうしてもぬいぐるみと一緒に寝たくて、お友達がお泊りに来るときは10個以上のぬいぐるみを隠さなくてはいけませんでした。
アイデンティティーに影響を及ぼす「見えない圧力」は存在します。この「見えない圧力」はステレオタイプや社会的期待からするくるものです(なるべき自分も参照して下さい)。そして、たとえステレオタイプに否定的要素がなかったとしても、そのステレオタイプに本来の自分が当てはまらない場合、多大な苦悩が生じる事もあります。この圧力は見えないだけに、厄介です。見えない圧力によって苦悩が生じているかどうか、マインドフルネスを使って自分の感情を観察するのもいいかも知れません。もしもこの圧力によって苦悩が生じているとしたら、自分の行動を少しずつ本来のアイデンティティーに沿ったものにすることで、本来の自分に少しは近づけるのではないでしょうか。ステレオタイプや社会的な期待はすぐに変わるものではありませんが、自分の行動は変えられます。私も本来の自分でいられるように、マインドフルネスを使って自分の行動を選ぶようにしています。